〜困ったときのお葬式マニュアル〜
相 続

相続とは

 「相続」とは、ある人が死亡した時、その人に属していた財産上の権利義務を受け継ぐことです。死亡した人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」と言いますが、借金などの債務も相続財産となりますから、相続したくないときは「相続放棄」や「限定承認」の手続きをとる必要があります。

相続人の資格のある者は

 まず配偶者、子供(胎児を含み、子供が相続開始以前に死亡しているときは  孫)です。子供がいないときは親(直系尊属)で、その親もいないときは兄弟姉妹(兄弟姉妹が相続開始以前に死亡しているときはその子である甥、姪)となります。配偶者は別格で、子供が第1順位、親が第2順位、兄弟姉妹が第3順位です。(民法第886条~890条)

法定相続分

 相続人が受け取る財産の割り当てを「相続分」と言います。遺言による指定がない場合、法律で相続分を定めており、これを「法定相続分」と言います。相続人が一人のときは、その人が全財産を相続します。複数のときは、相続人の順位に従って次のようになります。(民法第900条)
1.相続人が配偶者と子供のとき
配偶者が2分の1、子供が2分の1

2.相続人が配偶者と親のとき(被相続人に子供がいない場合 )
配偶者が3分の2、親が3分の1

3.相続人が配偶者と兄弟姉妹のとき(被相続人に子供も親もいない場合)
配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1

4.同じ順位が複数人のときは均等分割します。
文書による記録ほか、写真やビデオによる記録を担当します。

遺産分割協議

 遺言がなく、相続人が複数いる場合は遺産の分割について協議し、協議が整わない場合には家庭裁判所に分割を請求することができます。(民法第907条)協議によって法定相続分を放棄しようと、相続割合をどう決めようと自由です。
 遺産分割協議は相続人全員が参加して合意する必要があります。全員が参加しなかったり、協議が不調に終わったときは相続人が協同して、または1人で家庭裁判所に申し立てて調停分割され、調停が不調のときは審判分割されます。

相続の承認、放棄

 相続財産が債務超過のときには、相続人を困難から保護するために相続するか否かの選択ができるようになっています。「限定承認」と「相続放棄」がそれです。
 「限定承認」とは、相続によって得た財産の限度で債務等を弁済し、それを超えてまでは弁済しないことを条件とした相続です。相続人のうち1人でも反対する人がいた場合「限定承認」は成立しないので、このときは、「単純承認」か「相続放棄」のどちらかを選択することになります。

相続人がいないとき

 相続は開始されたが、相続人がいないとき、あるいは法定相続人が明らかでないときは、「相続人不存在」ということで相続財産は法人とされ、財産管理人を置き、相続財産の権利義務を清算します。(民法第951条~957条)

遺言とは

 遺言とは、自らの財産などを自らの死後どうするかについて生前定めておくことを言います。遺言と似たものに「遺書」がありますが、法律的に大きな違いがあります。 遺書も本人が書き残すもので、その内容は本人の遺志として尊重されるべきものでしょうが、法律的には効力をもちません。
 これに対して遺言は、有効となる内容と形式が全て法律で定められているものです。遺言できる人は満15歳以上で、(民法第961条)また、夫婦など複数の者が一内容の遺言を同一証書ですることはできません。(民法第975条、共同遺言の禁止)

遺言の方式

 遺言の方式には「普通方式」と「特別方式」があります。「普通方式」には、自筆証書、公正証書、秘密証書の3種類があります。(民法第967条)
 「特別方式」は、普通方式の遺言がかなわない、特別な状況でなされる遺言で、死亡危急者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言、の4種類があります。(民法第976条~979条)これら以外の方式によるものは遺言として認められません。


<普通方式の遺言> 1.自筆証書遺言
遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を全て自書し、印鑑を押したもので、追加、削除、変更の方式も定められています。(民法第968条)特別な費用もかからず、最も簡単な方式ですが、法律の専門家でない場合には不備や不完全である心配もあります。自筆が条件ですから、ワープロで書かれたものや、コピーは無効とされます。また、死後に家庭裁判所による検認を受ける必要があり、封印のある場合は家庭裁判所で開封する必要があります。(民法第1004条)

2. 公正証書遺言
最も安全、確実な遺言の方式です。公証人が遺言者の口述に基づき公正証書として作成するものです。証人2人以上の立ち会いが必要です。(民法第969条)公証人に支払う手数料が必要ですが、専門家が作成するので無効の惧れがなく、原本が公証人役場に保管され、家庭裁判所の検認の必要もありません。

3.秘密証書遺言
公正証書遺言は公証人、証人の前で遺言内容を明らかにするものですが、秘密証書は、遺言内容は秘密にしたまま、その封印したものを公証人、2人以上の証人の前に提出し、自己の遺言書であることを証明してもらうものです。(民法第970条)遺言証書の全文を自書する必要はなく、ワープロでもかまいません。但し、署名し、印鑑を押し、同じ印鑑で封印します。文章の追加、変更、削除は定められた方式によります。死後、家庭裁判所で開封、検認を受ける必要があります。


<特別方式の遺言>  以下のものは、あくまで遺言者が普通方式の遺言が不可能な、特別な状況にあるときだけに認められる遺言の方法で、遺言者が普通方式の遺言が可能になり6カ月生存したときには無効となります。(民法第983条) 1.死亡危急者の遺言
遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を全て自書し、印鑑を押したもので、追加、削除、変更の方式も定められています。(民法第968条)特別な費用もかからず、最も簡単な方式ですが、法律の専門家でない場合には不備や不完全である心配もあります。自筆が条件ですから、ワープロで書かれたものや、コピーは無効とされます。また、死後に家庭裁判所による検認を受ける必要があり、封印のある場合は家庭裁判所で開封する必要があります。(民法第1004条)

2.伝染病隔離者の遺言
伝染病のため隔離されて交通が絶たれ、人の行き来のできない場所にいるとき、警察官1人、証人1人以上の立ち会いで遺言書を作成することができます。(民法第977条)

3.在船者の遺言
船舶中にある者は、船長または事務員1人、証人2人以上の立ち会いで遺言書を作成できます。(民法第978条)

4.船舶遭難者の遺言
船舶遭難の場合、船舶中で死亡の危険が迫った者は証人2人以上の立ち会いで口頭で遺言できます。但し、証人はこれを筆記、署名、印鑑を押し、家庭裁判所の確認を得ないと効力をもちません。(民法第979条)

遺言の効力と取り消し

1.遺言は遺言者が死亡した時点から効力を発揮します。(民法第985条)
2.受遺者は、遺贈を放棄することができますが、催告期間内に承認、放棄の意思表示をしないときは承認したとみなされます。また、いったん承認または放棄したものを取り消すことはできません。(民法第986条~989条)
3.遺言者は、いつでも、遺言によって、前の遺言の全部または一部を取り消すことができます。(民法第1022条)
4.前の遺言と内容が重なったり、矛盾するなど抵触する遺言があったときは、後の遺言によって前の遺言が取り消されたものとみなされます。(民法第1023条)また、遺言書を自分の意思で破棄したり、遺贈の目的物を破棄、処分したときも、その部分の遺言を取り消したとみなされます。(民法第1024条)

遺留分

 遺言の内容に異議がある場合、一定の相続人が一定の割合で必ず相続できるように定められたもの「遺留分」と言います。遺留分は相続人が親(=直系尊属)だけの場合は3分の1、配偶者や子供の場合は2分の1です。兄弟姉妹には遺留分がありません。(民法第1028条)
 この「遺留分」を請求することを「遺贈、贈与の減殺の請求」と言い、相続の開始(死亡時)あるいは減殺すべき贈与または遺贈の事実を知ったときから1年以内に行わない場合、または相続の開始から10年経過すると時効になり、権利は消滅します。(民法第1042条)
 つまり遺言者は、相続人が兄弟だけの場合には遺言で全財産を自由に遺贈を決定でき、相続人が親だけの場合には財産の3分の2について、相続人が配偶者と子供のときは財産の2分の1について自由に決定できます。

相続税

 死亡してその財産を相続しても、相続税が全ての人にかかるわけではありません。相続税を納付すべき財産を遺した人は、全死亡者の5%程度と言われています。「相続財産=課税される遺産総額」ではありません。課税される遺産を計算するには次の手順で行います。

1.被相続人の遺産の総額を計算する。
相続人に相続開始(=死亡時)前3年以内に被相続人より贈与された財産があればこれも遺産総額に加算します。土地、家屋、事業用財産、有価証券、現金・預貯金、家庭用財産など金銭に見積りできる経済的価値のあるもので、借地権、電話加入権、著作権、貸付金も含まれます。この他、本来の相続財産以外の死亡保険金、各種保険金、死亡退職金もみなし相続財産として加えて計算します。

2. 遺産総額から非課税財産と債務、葬式費用を控除します。
非課税財産とは、
・墓地、墓石、仏壇、神棚、祭具
・公益法人に申告期限内に寄付する金額、財産
・生命保険金のうち500万円×法定相続人数分(放棄した人の数も含む)
・死亡退職金のうち500万円×法定相続人数分(放棄した人の数も含む)のことです。
債務とは被相続人の借入金、未納の税金などを指します。 葬式費用とは、被相続人の葬儀にかかった費用で、葬儀社への費用、寺院関係費用、接待費用、その他(火葬、霊柩車の費用など)です。香典返しの費用、法要に要する費用などは葬式費用として認められていません。 これらを控除後の財産が課税価格となります。

3.課税価格から基礎控除をします。
基礎控除額は(1995年現在)「5000万円+1000万円×法定相続人数(放棄した人の数も含む)」で計算されます。基礎控除の結果、プラスが出ればそれが「課税される遺産総額」になります。マイナスになれば税金はかかりませんし、相続税の申告の必要もありません。

相続税の申告と納付

 相続税の納付義務者は、相続の開始を知った日から10カ月以内に、被相続人の死亡時の住所の所轄税務署の相続税の申告書を提出し、相続税を納付しなければなりません。金銭での納付が原則ですが、困難な場合は一定の条件の下で物納や延納も認められます。

「もしも」の時にあわてないために、お葬儀に関することはお近くの山口県葬祭業協同組合加盟の葬儀社へお気軽にお問い合わせください。

一覧に戻る